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REM(実耳測定)を導入しました

いつも当店のブログをご覧いただきありがとうございます。弊店は、2022年秋、実耳測定(REM Real Ear Measurement レム)を導入致しました。すでに多数のお店様が導入されています。

REMの目的

聴力を測定しその聴力をPCから補聴器に送り込み初期設定と初期調整を行う、これをファーストフィットと呼びます。ファーストフィットの状態ですべてが完璧に調整出来ればこのような装置は必要ないと思います。ただ補聴器から出る音は耳栓から漏れたり、お耳の中で音の変化が起きます。パソコン上では「これでOKですよ」でも装用者様にとっては「うるさいけど会話聞こえないね」というギャップが起きてします。パソコン上で表示されている数値が果たして装用者様に合っているのか、測定と確認、修正を行うための装置がREMです。

「聴力を測定してパソコンに取り込み、メーカーのソフトでファーストフィット!、ばっちり!」

「全然合わないんですけど💢」

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REMの手順

REMを行う際の手順をアメリカの聴覚系YoutuberさんとREMを販売しているインターアコスティック社の動画を引用してご紹介いたします。

引用した動画です
参考にした動画です

最新の補聴器やOTC補聴器、コストコ補聴器、測定機器などを紹介しているYoutuberさんです。自分はこの方の動画を見て日本未発売の補聴器の情報を勉強しています。本日は、2021年にアップされた動画を引用いたします。

プローブチューブの挿入

@InteracousticsTV Why Perform Real Ear Measurements?より引用 https://youtu.be/f7p0augOi9Y?t=357

REMを行う際は、プローブチューブという約1㎜の柔らかいチューブをお耳に挿入いたします。(当然鼓膜に接触したりはいたしません)チューブを差し込む際、耳あかがあると安全にチューブを挿入出来ないためREMを行う際耳鼻咽喉科でお耳のお掃除をしてきていただくことをおすすめ致します。

プローブチューブをノギスで測定してみました。柔らかいので正確な測定ではありませんが、直径は約1㎜です。ふにゃふにゃで非常に柔らかいため、お耳の中の壁に接触しても痛くありません。(個人的感想)

人によっては咳が出そうになったりむずむずしたりする場合があります。

チューブの挿入 大丈夫?

当店が導入しているREM「アフィニティコンパクト」は、プローブチューブのインジゲーターを実装しています。チューブが外耳道内の適切な位置に配置されるとアラートされる仕組みになっていますので入りすぎたり、挿入が浅すぎて測定誤差が発生することを防止できるようになっています。インジゲーターが緑になり適切な位置に挿入できた後、オトスコープで耳道内を目視で確認しています。

ゲージがグレーだとまだ挿入が浅い状態です。

ゲージが緑になりベストポジションに挿入できました

裸耳利得の測定

補聴器には、REUG(裸耳利得)というパラーメーターがあります。通常初期設定(ファーストフィット)で裸耳利得は平均値が入力されています。裸耳利得については、下記参考ページをご覧ください。

@InteracousticsTV Why Perform Real Ear Measurements?より引用 https://youtu.be/f7p0augOi9Y?t=422

自分の娘の耳でREUGを測定しフォナック補聴器に入っているデフォのREUGと比較してみました。3KHz付近が結構違います。フォナック以外の補聴器もREUGは個人個人の数値を入れることができます。(スターキーは不可 2023年2月現在)オーティコン、シグニア、リサウンド、ワイデックスをご利用の方はREUGも測定して数値を入れてもらいましょう。

赤い点線がデフォのREUG グレーのラインがREMで測定したREUG

実耳装用特性:REAR(real-ear aided response)の測定

@InteracousticsTV Why Perform Real Ear Measurements?より引用 https://youtu.be/f7p0augOi9Y

今度は、プローブチューブを着けたまま補聴器を装用し補聴器を介してお耳の中で聞こえている音を測定します。上記画像右側に写っているグラフを簡単にご説明致します

調整ソフト初期調整

お客様の聴力を調整ソフトに反映して補聴器を選択し、自動で計算された値がグラフ化されます。(補聴器経験者、NAL-NL2 ※これについては別記事にて)

初期調整でREARを測定

初期調整のままREMを使い補聴器装用状態でどれくらい聞こえているか測定します。グレーのラインが目標値、青いラインが実測値です。

REM測定で目標値に合わせる

グレーのラインと青緑のラインがだいたい一致しました。これは65dBの会話を聞いてお耳の中でどの程度聞こえているか?測定しています。

メーカーソフトで見ると

調整ソフトの画面はこんな感じになっています。点線が調整ソフト上の目標値、実際調整した値は実線+〇の値です。

調整ソフト上では目標値通りに設定されていますが、REMで実際のお耳の中で聞こえている数値をみると目標値とギャップがあることがわかりました。そのギャップを修正しREM上の目標値に近づけるのがこの測定の目的です。

REARのグラフの見方

①・目標値 NAL-NL2という計算式によって聴力から導き出された目標値です

②・調整前実測値 調整ソフトで初期設定を行ったときの数値です

③・調整後実測値 ①に近づくように調整ソフトで整えた後の数値です

●グラフの縦軸 下から上に向かって音が大きくなります(音圧レベル dBSPL)

●グラフの横軸 左から右に向かって音が高くなります(周波数 Hz)

●REAR(ISTS 65dB) 補聴器が音声を実質的にどれだけ増幅しているか測定する方法(国際音声試験信号4)

参考サイト:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/64/4/64_308/_pdf

ISTSを実際に聞いてみよう!調整中この音源が流れます。

Faithhearing Centre

ISTS (国際音声テスト信号) は、補聴器の技術評価やプローブマイク測定に使用できる、国際的に認められたテスト信号です。音声に関連するすべての特性が含まれています。

https://www.audiologyonline.com/ask-the-experts/what-is-the-ists-signal-38

小さな声・大きな声の聞こえを測定

上記では65dBSPLの聞こえを実測し調整しました。続いて小さな声(50dBSPL)、大きな声(80dBSPL)が目標値通りにお耳に届いているか確認します。大きすぎる部分は下げ、目標値に足りていない部分は上げて通常会話・小さな声・大きな声が目標値により近い数字に調整します。

65dBSPL(会話程度)
80dBSPL(大きな声)
50dBSPL(小さな声)

65dBSPL⇒80dBSPL⇒50dBSPLの調整を行い、それを左右行います。

なぜそれぞれの音の大きさに対して調整が必要なのでしょうか?

例えば下記の結果は、50dBSPL(小さな声)の目標値に対して実測値が大きく下回っています。この結果は「肝心な小さい声が聞こえない」といった主訴に繋がり、聴こえの満足度を低下させてしまう可能性があります。

50dBSPL(小さな声)

また、80dBSPL(大きな声)の目標値に対して実測値が大きく上回った場合、「電車ホーム内のアナウンスがうるさい。音が割れて聞こえる」などの主訴に繋がり、同様に聴こえの満足度を低下させてしまう可能性があります。このように補聴器はさまざまな大きさの声に対して聴こえの満足度を高めるために、それぞれの音の大きさに対して微調整する必要があります。

細かく調整するとなると「すごく時間がかかりそうだし、疲れそうだな、、」と思われるかもしれませんが、測定・調整の間、お客様は正面のスピーカーから聴こえる音源を聞き流していただくだけで測定は終了します。集中してボタンを押したり、返事をしたりといった手間はありません。REMによる測定・調整にかかる時間自体も20~30分程度と短時間ですので、お客様への負担が少ない点もメリットのひとつです。

まとめ

今回は当店が新規導入した実耳測定器「アフィニティコンパクト」の概要と測定方法をご紹介いたしました。

実耳測定ですが、正直トライアル段階まで二の足を踏んでいました。「効果がでるのか?」「購入して使いこなせるか」「時間がかかりお客様をお待たせしないか」悩んでいました。たまたまですが、オーティコンデンマーク本社より「中の人」が、日本支社からオージオロジストの方がご来社され実耳についてレクチャーを受ける機会をいただきました。

  • REMあり+防音室、REMあり防音室なし、REMなし防音室なし 3タイプのお店を比較すると調整回数に3倍以上の差が出る(REMあり+防音室ありが一番少ない)
  • REMあり+防音室ありで調整したお客様の満足度について

オーティコンの統計ではREMあり防音室ありのお店で調整された方の満足度が非常に高いことをご教示いただき、今回導入を決意いたしました。世界第二位の補聴器メーカーさんが調べた結果ですから間違えないはず。

自分の能力・力量ではREMのすべてを把握することはできないと現在思っています。この装置は調整を行うためのツール(特殊工具・SST)と考え手順通りの方法を実施することにしています。車の整備に例えるとSSTなしでは整備できない部分もそれがあればいともたやすく分解整備でき時間短縮して整備が行えます。REMも手順と駆動するソフトの使い方がわかればPCにぶら下がっている測定器として取り扱うことが出来ます。なのでREMの深いところは有識者様のセミナーや動画、ブログで勉強させていただこうと思っています。

補聴器の調整がうまくいってなくて苦しんでるユーザーさんを見ると頑張らなと思うが、こればっかりは自社の発展と実耳の普及活動いかんなので時間がかかる。あとはもちろん優良な専門家も。 調整技術レベルの底上げのためにも実耳フィッティングは必要。上級者専用のテクではない

https://twitter.com/YatsutaKizsky/status/1617157407360307201?s=20

弊社では2025年までに全店舗で実耳測定を行えるように設備投資を行っています。残り12台の測定器購入が必要で、2,000~2,500万円程度の経費が掛かるようです。実耳測定器を購入するだけではなく、店内レイアウトを変更したり大変ですが、「聞こえ満足度」向上のためにやり切ります。

https://twitter.com/okanotweet/status/1622465461614174209?s=20

ツイッターで「実耳(REM)」についてツイートされている専門家の方のご意見を拾ってみました。「聞こえ満足度」向上のために当店も実耳を導入し、日々精進してまいります。最後までお読みいただきありがとうございました。