Auracastは、補聴器を使う方にとって画期的な技術です。今回は、この新しい音声共有技術を非対応補聴器でも利用する方法をご紹介します。現在、Auracastに対応した補聴器は、リサウンド・スターキーの上位モデルだけに限定されていますが、非対応補聴器でもAuracastで音声を共有する方法を見つけましたのでご紹介致します。
Auracastについて詳しく紹介した記事はこちら
筆者の独り言
Auracast対応製品(補聴器以外)がなかなかそろわずやきもきしていました。GW後、Moorテクノロジーさんから入手可能になりました。(一部は日本のアマゾンで売っています)
高価な業務用の機器や補聴器メーカー製のAuracast送信機はいくつか発売されていますが、結構高いですよね。業務用はもっと高い。僕はアマゾンで1万円以内で買って気軽にAuracastを使うのを夢見ています。業務用は除いてAuracast製品を紹介していきます。補聴器メーカー製はギリギリOKにしています。
Auracastの問題点

それはずはり、リサウンド(ベルトーン含む)しか2025年5月現在Auracastの恩恵を受けることができないことです。実は、フォナックのインフィニオ(Iシリーズ)やオーティコンのインテントは、Auracast Ready つまり今後のファームウエアアップデートで対応する予定になっていますが現在はまだ利用できません。
スターキーのエッジAIもAuracastを実装していますが、今度はAuracastアシスタントというAuracastを掴むために必要なアプリを用意していないため事実上使えません。今後、どんどん広がりを見せるであろうAuracastですがちょっと普及のスピードがやや遅い印象を受けます。
Auracast対応製品に特化したメーカー
現在リサウンド以外は補聴器メーカーのアップデート待ちの状態なので多くの補聴器ユーザー様はAuracastを活用できない状態です。が、今からご紹介するメーカーは、Auracast対応製品に特化して様々な機器をリリースしています。こちらのメーカーの製品を使えばAuracast非対応補聴器もAuracastを受信可能になります。では早速紹介していきましょう!
ムーアテクノロジーという台湾のメーカーさんでAuracast対応製品を続々とリリースしています。自分が所有しているMoorさんの商品をご紹介致します。
①USBドングル
PC・スマホ・スイッチなどに接続すると出力される音声をAuracastで送信できます。
②オーディオレシーバー
Auracast放送を受信し3.5㎜イヤホンジャックに出力することができます。今回の目玉はこちらです。
③トランスミッター
アナログ音声・光音声(SPDIF)・さらにマイク音声をAuracastで送信できます。
④マイク+トランスミッター
ワイヤレスマイクとなり拾った音声をAuracastで送信できます。現在売り切れでまだ入手出来ておりません。
今回は②の「MoerDuo Plus ™ Auracast™ Audio Receiver」を使ってAuracast非対応補聴器に音声送信を試みます。
今回検証する内容
Moerデュオプラスオーディオレシーバー(以下Moerデュオ+)はAuracastの放送を掴んでその音声を3.5㎜イヤホンジャックに変換することができる商品です。こちらにTコイルに変換できる「Mリンク」をつなげればTコイル対応補聴器に音声を入力できるはずです。

この方法を使うメリット
- Tコイル付きの補聴器ならどんな補聴器でも使用することが可能
- Mリンクを優先イヤホンに変えれば健聴者の方も使用可能
ディメリット
- Tコイルを使うと音質が低下する(Tコイルが有効に使える周波数は限られている) LE Audioの恩恵が受けにくい
- Tコイル非対応補聴器は使用できない

補聴器のTコイル(テレコイル)は、磁場を利用して音声を補聴器に伝える仕組みですが、一般的に300Hzから3000Hzの範囲で有効に機能するとされています。この範囲は、会話の聞き取りに適した周波数帯域であり、電話やヒアリングループシステムでの使用に最適化されています。
検証で使う補聴器
今回はリサウンドさんよりお借りしたAuracastとTコイル両方搭載している耳かけ型補聴器「ネクシア9 NX988-DWC」で行います。
受信機
Auracast内蔵補聴器

Auracast受信機

送信機(Auracastを飛ばす側)
MOORテクノロジーのMoerLinkという送信機をiPadに取付してAuracastで音声を送信します
Auracastアシスタント
Auracastの音声を選んで掴むアプリです。
【重要】Auracastアシスタントを担うスマホは、Auracast対応のスマホである必要がありません。2025年5月現在、iPhoneはAuracastに対応しておりません。ただ、アプリがその機能を持っていることでAuracastアシスタントとして使用できます。これから紹介するMoerLab ASST.やリサウンドスマート3Dはスマホ本体がAuracastを実装していなくても問題なく利用できます。
Tコイル経由でAuracastを聞くパターン
MOORテクノジーからリリースされている「MoerLab Asst.」というアプリを使用します。このアプリは同社の「MoerDuo Plus ™ 」を所有していないと機能しません。
当店には計4つのAuracast放送を飛ばしています。TV-Streamer(リサウンド製)、Multi-Mic+(リサウンド製)その他2つ。リサウンド製の送信機がサードパーティー製のMoerDuo Plus ™ で受信できることがわかります。
Auracast対応補聴器で聞くパターン
現在完全実装しているのはリサウンドのネクシア・ビビア・サビシリーズ、ベルトーンのシリーンだけです。Auracastを掴んで切り替えるには、リサウンド(ベルトーン)がリリースしている補聴器用のアプリを使用します。
補聴器とヘッドフォンからの音声を録音
Auracast直接受信と受信機経由のTコイル、あと市販のヘッドフォンの3種類でどれくらい聞こえが違うか、こちらも検証します。補聴器の音を録音するためにこちらを用意しました。いわゆるバイノーラルマイクという商品です。

疑似耳の奥にマイクが着いておりそれをRCA端子で出力してくれます。今回は出力した音声をスマホのレコーダーアプリで録音してAuracastの音声比較をしたいと思います。
イメージできましたかー?
ここまでAuracast放送を選んで掴むアプリと受信機をご紹介致しました。だんだんイメージが出来てきましたでしょうか。AuracastはWi-Fiのように今飛んでいる電波を選んでアプリで選択、選択後今使っているデバイス(補聴器・イヤホン・受信機)が切り替わる仕組みになっています。
つまり受信機のメーカーがアシスタントと呼ばれる切換えアプリを用意してくれればどんなスマホでもAuracastを利用することが出来ます。GalaxySシリーズはスマホ本体にこの機能を内蔵していますが、話がわかりにくくなるのでここでは割愛致します。
検証開始
まず初めにAuracast機能を内蔵したリサウンド「ネクシア」で行います。iPadのYoutubeで再生した榛葉幹事長会見をネクシアで受信し再生します。
リサウンドネクシアはこちらの聴力を入れて初期調整(ファーストフィット)だけ行いました。

動画について
こちらの榛葉幹事長会見の動画から音声を録音させていただきました。政治については全くわかりませんが、①調べたら国民民主党の動画は著作権フリーなこと ②適度に新しい話題(の会話) が必要だったためこちらを選びました
Auracast™対応補聴器

MoorテクノロジーのMoerLink(iPadについているUSBドングル)から問題なくリサウンドネクシアに音声送信できました。サードパーティー製の送信機でもAuracast™に準拠していれば何ら問題なく使用可能なことがおわかりいただけると思います。


録音した榛葉会見はこちらから(大きな音がでますので注意してください)
Auracast非対応補聴器でブロードキャストを受信
補聴器にはあらかじめTコイルというプログラムを追加しておく必要があります。Tコイルを搭載していない補聴器にはこの方法はご利用いただけません。

わかりにくいので番号順で解説
- ①→② Auracastで送信して受信
- ③→④ 3.5㎜イヤホンジャックよりMリンクで補聴器に送る
- 補聴器は、Tコイルプログラムに切り替えておく
- ⑤ MoerLab ASST.で聞きたい放送(ブロードキャスト)に切り替え
録音した榛葉会見はこちらから(大きな音がでますので注意してください)
有線ヘッドフォン
手持ちの有線接続のヘッドフォンをMoerDuo Plus ™に接続して美耳で榛葉幹事長会見を録音してみました。ヘッドフォン(ヘッドセット)は、Razer Krakenというメーカー製です。

録音した榛葉会見はこちらから(大きな音がでますので注意してください)
おまけ 音楽をTコイルとAuracastで比較
音楽を聞いたとき、直接Auracastで聞く場合とTコイル経由で聞く場合の比較テストをしてみました。やはりTコイルが低音が物足りなくなってしまいます。楽曲は魔王魂様のBurning Heartを使っています。

Auracastで直接視聴/補聴器/ネクシア
※音が大きいのでご注意ください
Tコイル経由で視聴
結果
Tコイルで補聴器に入力した音声ですが、確かに低周波数が欠けており音量感は若干失われていますがわりと音質は良いのではと感じました。Tコイルプログラムは初期調整のため調整(フィッティング)次第ではもっと広がりのある音質にできるのではと思いました。
まとめ
今回はMOORテクノロジーさんの新製品「MoerDuo Plus ™」を使ってAuracast非対応補聴器でブロードキャストを聞く方法をご紹介致しました。MoerDuo Plus ™はメーカー直販サイトで$99.00 USDで販売されています。日本のアマゾンには、TV hearMore™が販売されていますのでMoerDuo Plus ™もいずれアマゾンにラインナップされるのではと予想しています。
Auracast対応補聴器って今はどれもかなり高額です。総合支援法対応補聴器も非対応です。この方法を使えばAuracastの高音質な聞こえはやや下がってしまいますが、それなりに安価でAuracastを体験できます。
これは独り言です
補聴器用のマイクはどれも高すぎる!メーカー感の互換性もない!受信機も高額!こういったイニシャルコストの問題でワイヤレス装置導入に難色を示しているとご来店のお客様から聞くことがあります。Auracast対応製品は数千円ではありませんが、今後普及がすすむにつれてアマゾンや楽天で手頃な価格で入手ができるのではと思います。

Auracastは、従来の補聴器やスマートフォンにとらわれず、より多くのデバイスでシームレスに音声を共有できる革新的な技術です。最新の検証でも、非対応機器においても十分な音質と安定性を実現していることが明らかになりました。これにより、日常のコミュニケーションはもちろん、会議やイベントなどさまざまなシーンで、より快適な音体験が提供されることが期待されます。
さらに、Auracastはシンプルな操作性を備え、ユーザーの利便性を追求した設計となっています。これからも技術進化が進む中、今までの枠にとらわれない柔軟な発想で、より広範囲なオーディオソリューションへと発展していくでしょう。私たちの今回の検証が、皆さんの製品選びや導入判断の一助となり、未来の音環境づくりに貢献できれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

次回も引き続きAuracastを検証!フォナック ロジャーオンで集音した音声をAuracastで共有する方法を検証します。準備はできていますが、まだまだ問題が残っていますので解消次第記事をアップ致します。
この記事が気になったら

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