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【後編】エンツォIAの“差額”。この差額は価値があるのか?検証してみた!Auracast™対応スーパーパワー補聴器という選択肢

いつも当店のブログをご覧いただきありがとうございます。

今回は、総合支援法による補装具支給制度を使い補聴器を検討されている方向けへの記事です。聴覚でお手帳をお持ちの方は、補装具(補聴器)が都道府県から支給される制度があります。この支給制度を利用すると、お手帳をお持ちの方専用の補聴器を購入することが出来、最小限の負担で補聴器を購入することができます。

それとは別に補聴器のカタログには、片耳ウン十万円という補聴器がさらっと掲載されています。この支給制度とカタログの補聴器の差は一体なに?装用者の方にとってこの違和感を感じたことは多いのではないでしょうか。

今回の記事は補装具支給制度で支給される金額に「+10~14万円」すれば、Auracast/LE Audioなど最新機能がついた補聴器にアップグレードできる、その理由と流れについて解説していきます。

まず最初に知っておきたいこと

手帳をお持ちで補装具支給を受けられる方が選べる補聴器は、ざっくりわけて2種類あります。これは、補聴器の形状のお話ではなく、選べる価格帯やグレードについてです。

総合支援法対応補聴器(=支給対象の補聴器)

都道府県が定めた仕様を満たす手帳をお持ちの方を対象とした補聴器です。
定められた金額(=基準額)までは公費で賄われ、自己負担は最小限で済みます。

②一般販売の補聴器(=カタログに載っている高性能機種)

家電製品と同じように、メーカーが自由に設計した最新モデル。
片耳ウン十万円のモデルもここに含まれます。

補装具支給制度で支給される金額

重度難聴耳かけ型補聴器で都道府県から支給される金額をおさらいしておきましょう。

基準額両耳支給の場合片耳支給の場合
1.重度難聴耳かけ型補聴器142,400円71,200円
2.イヤモールド19,000円9,500円
3.加算額9,684円4,842円
4.デジタル補聴器加算4,000円2,000円
1~4の合計175,084円87,542円
5.利用者負担額0%~10%0%~10%
6.公費負担額157,575円~175,084円78,787円~87,542円

※両耳、片耳の支給については、地域の役所福祉課にご相談ください
※④のデジタル補聴器加算は、言語聴覚士または認定補聴器技能者(専門的知識を有するもの)の調整が必要と医師意見書に記載があった場合のみ加算されます。
※⑤利用者負担額は、役所が決定します。販売店では、利用者負担額が何%になるか、わかりかねます。
※制度の内容は2025年11月時点の情報をもとにしています。

たまに誤解されやすい点

よくあるご質問がこちらです。

「このカタログに載っている◯◯万円の補聴器も、手帳があれば全額支給されますか?」

結論は、支給されるのは“①総合支援法対応補聴器”だけです。一般販売の最新モデルは支給される金額にご自身で上乗せして購入する必要があります。

ここが最初に理解しておきたいポイントです。

この記事でおすすめする補聴器は①②のどちら?

今回のテーマである「エンツォIA」は、② 一般販売の補聴器に分類されます。自費で差額負担が発生します。差額の詳細については記事後半で詳しく説明します。

ここまで聞くと、
「それなら手帳対応機でいいのでは?」
と思われるかもしれません。

でも実際には、最近この“差額を払ってでも”最新機能がほしい”という方が増えています。

理由は、エンツォIAが単なる“補聴器の上位モデル”ではなく、
情報保障やQOL向上に関わる新しい仕組み(Auracast/LE Audio)を搭載しているためです。

ここからが本題です

ここまでで、

  • 公費負担額+最小限の負担で購入できる補聴器
  • 公費負担額+自己負担で購入するカタログ掲載の補聴器
  • エンツォIAがどちらに属するか

が整理できました。ここから先は、「差額を払ってまでエンツォIAを選ぶメリットはあるのか?」を具体的に解説していきたいと思います。

エンツォIAのラインナップ

スーパーパワー補聴器「エンツォIA」は5グレード、形状は1種類、カラーは10色展開になっています。

カラーバリーション

サンド(通常色)

スパークシルバー(通常色)

ゴールド(通常色)

ブロンズ(通常色)

リサウンドレッド(通常色)

セピアグレー(特注色)

チャコール(特注色)

エスプレッソ(特注色)

ディープブラック(特注色)

ネイビーブルー(特注色)

渋い系の色だけでなく、ブルーやレッドもあり少しだけカラフルなカラー展開ですね。

グレード

エンツォIAのグレードは5グレード展開。上位モデルには、新搭載「クリアフォーカス」という指向性モードが入り、騒音下でも会話聞き取りをサポートする機能が入ります。

グレード別機能比較表

この表はリサウンドの資料から拝借したものです。自動声センサー?360オールアラウンド?オールアクセス?クリアフォーカス、ウルトラフォーカス?何が違うのとなりそうです。当記事ではこの機能の違いはいったん置いておきます。後日別記事で上げる予定です。

価格(メーカー価格)

エンツォIA3とIA9では、約3.7倍も価格に差が設けられています。その差は歴然なのか、性能比較表だけではわからない部分もあると思います。エンツォIAをご検討される場合、比較試聴が重要になってきます。リサウンドの補聴器は、3~9グレードを店舗で切替えて試聴できる機能がありますのでぜひそれを使って比較試聴してみることをおすすめ致します。

当店販売価格

当店では、補聴器ご購入時、メーカー価格に割引を入れて販売しています。エンツォIAの割引後価格は下記となります。

エンツォ IA9¥1,009,600¥575,600
エンツォ IA7¥705,600¥404,600
エンツォ IA5¥481,600¥278,600
エンツォ IA4¥337,600¥197,600
エンツォ IA3¥273,600¥161,600
※17,600円(税込み)のデスクトップ充電器を含みます

エンツォIAを補装具支給制度を使って購入する場合

スーパーパワー補聴器をご利用の方は、総合支援法による補装具支給制度をご利用されるケースが多いと思います。この支給制度を使ったとき、エンツォIAはどれくらいのご出費で購入できるか調べてみました。

差額購入のイメージ

シミュレーション

  • 重度難聴耳かけ型 両耳で支給
  • 利用者負担額10%
  • エンツォIAを購入時にイヤモールドも両耳新調(イヤモールドは当店販売価格で計算)
  • グレードはエンツォIA3を選んだ場合
品目価格備考
補聴器本体 エンツォIA3 両耳273,600円当店の割引後販売価格
充電器込み
イヤモールド 両耳19,000円イヤモールドはハードのカラーはクリアで計算
重度難聴耳かけ型 両耳
公費負担額
▲175,084円言語聴覚士または認定補聴器技能者が調整を行う場合(専門的知識を有するもの)
利用者負担額
10%の場合
17,508円
合計135,024円

シミュレーション

  • 重度難聴耳かけ型 両耳で支給
  • 利用者負担額10%
  • エンツォIAを購入時にイヤモールドも両耳新調(イヤモールドは当店販売価格で計算)
  • グレードはエンツォIA4を選んだ場合
品目価格備考
補聴器本体 エンツォIA4 両耳337,600円当店の割引後販売価格
充電器込み
イヤモールド 両耳19,000円イヤモールドはハードのカラーはクリアで計算
重度難聴耳かけ型 両耳
公費負担額
▲175,084円言語聴覚士または認定補聴器技能者が調整を行う場合(専門的知識を有するもの)
利用者負担額
10%の場合
17,508円
合計199,024円

このシミュレーションは、利用者負担額が最大の10%だった場合を想定して計算しています。利用者負担額が少ない方は、この金額より合計が安くなります。

IA3を選んだときの差額13万円!

エンツォIA3を選び、両耳の公費負担額が175,084円だった場合、135,000円の差額が必要になります。だったら、総合支援法対応の補聴器で差額が少ないほうがいいよね!って方もおられると思います。この135,000円に価値はあるのか?

Auracast/LE Audio

エンツォIAと支援法対応補聴器の最大の違いは、LE Audio/Auracastを実装していることです。近日アプデで対応ではなく、実装ずみなので、すぐにご利用いただけます。

LE Audio/Auracastがあるといいことありますか?

たくさんありすぎるので箇条書きでお伝えします。詳しくは当店のブログで詳しく解説しています。

  • ストリーミングの音質が格段に良くなる
  • ストリーミング中の電力消費を抑えられる
  • 約30m離れてもストリーミングできる
  • アマゾンで売っているUSBドングルを使えば簡単にストリーミングできる
  • 今後市販品のドングルがどんどん使えるようになる
  • 一部の市販品マイクも補聴器に使える(ロジャーなどに縛られない、価格安い)
  • セミナーや映画館などにAuracastがどんどん設置される
  • アプリワンタップで高音質な音声が聞ける
  • 家族と一緒にストリーミングできる

LE Audi/Auracastを実装していると「有り余る」ほどメリットが出てきます。今まではメーカー製の専用マイクしか使えませんでしたが、LE Audioがあれば市販品でもOKの場合あり。高額なロジャーなどに縛られることも少なくなるかもしれません。

Auracastの関連ブログ

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充電式には故障面/安全面のメリットあり

今回のエンツォIAは全モデル充電式です。スーパーパワー補聴器をご使用される方にとって充電式はやや不安があるのでは?と私は感じています。電池式ならストックしておけばいつでも交換が可能です。

しかし、充電式補聴器は電池開閉部分がないため故障の面でメリットが出てきます。

  • 電池開閉部分からの汗・湿気の侵入が少ない
  • 電池に汗が付着し電池が錆びる心配が少ない
  • 電池蓋そのものの破損リスクが少ない
  • お子様の電池誤飲等のリスク回避
  • ボタン電池の交換不要(ご高齢の方向け)

とあるメーカーの「中の方」にお願いして、充電式補聴器と電池式補聴器の故障率をざっくり見てもらいました。この話にはエビデンスはありませんが、故障については、充電式は電池式の半分以下という結果が出ているそうです。スーパーパワー補聴器をご利用の方は毎日ハードにご利用いただくことが多く、汗をかきやすい方は頻繁に電源が落ちる等の故障が出ることがあります。こういった修理面での不安を抑える効果が充電式にはあると思います。

充電式=絶対に壊れない、という意味ではありませんが、「「毎日長時間お使いになる方が多いハイパワー補聴器」との相性は良い構造だと感じています。

ハードウエアが強化された

別記事でも上げましたが、エンツォIAは今までリサウンドの補聴器の弱点だった部分がことごとく強化されています。

フック取り付け部分の強化

フックを取り付ける部分がねじ式から圧入式に変更されました。これでフックがぷらぷらになるのを大きく抑えられそうです。

マイクカバー交換式へ

マイクカバーが自分で交換できるタイプに変更されました。補聴器のボディとマイクカバーは一体式になっているメーカーが多いので、マイクカバーが頭皮や皮脂で詰まって音が途切れるというトラブルが起きます。エンツォIAはお店やお客様ご自身でマイクカバーが簡単に交換できます。これはよい改良点ですね!

ここまでのまとめ

総合支援法対応補聴器と一般販売モデルである「エンツォ」IA3との差額は135,000円であり、エンツォIA3を選んだときのメリットは、全部で3点。

  • LE Audio/Auracast(接続性と情報保障)
  • 充電式による故障の低減と安全面の強化
  • ハード強化によるメンテナンス性の向上

この3点に135,000円の価値があると思われる方は、今回このエンツォIA3を補聴器選びの選択肢に入れるべきだと思います。特にAuracastは非搭載補聴器で使う場合、かなりの制約を受けます。また非搭載補聴器にLE Audioを後着けすることは現時点では不可です。後着けできないので先行投資するか、現状維持するか、要検討ではないでしょうか。

長期装用者の方の調整について

補聴器の装用経験が長い、昔から補聴器を使用している、1日ずっと補聴器を使用されている方は調整の際、環境認識や自動調整・自動切換えの指向性をとめているケースが多々あります。その理由は。。。

【1】強力すぎる多方向指向性

理由:周囲の音を削りすぎると“音の手がかり”が消える。

  • 音が“細く”なる
  • 片側だけ音が来る感覚
  • 周囲の音が拾えず不安になる
  • 「声は聞こえるのに情報量が減る」感覚

【2】環境認識(シーンオートマチック)が頻繁に働く

長期装用者の方にとって“音が安定していること”が優先。音が変わるだけで聞き取りがリセットされてしまうため、オート機能はマイルドで良いことが多い。

  • 音がコロコロ変わる
  • 落ち着かない
  • どの音が主役かわからなくなる
  • 音量が不安定に感じる

【3】自動ボリューム

【2】と同じく音が安定していることが優先の場合、自動で音量が変わると自分の声の聞こえ方も変わってしまい、結果気持ちが悪く感じてしまう。

  • 音がふわふわする
  • ボリュームが勝手に変わって聞き取りづらい
  • 特定の声が遠くなる

【4】雑音抑制が強すぎる

長期装用の方は少しの加工でも“聞き取りのヒント”が消えやすい。

  • 子音がさらに聞こえにくくなる
  • 音がモコモコする
  • 雑音と声の境目が曖昧になる

※上記解説は、弊社で調整されているスーパーパワー補聴器長期装用者の方20名様のフィッティングデータより考察しました。

※補聴器の調整は、個人差がありすべての方にこの内容が当てはまるわけではありません。

◆まとめ

この画面は貸し出し専用補聴器の画面です

長期装用者の方、スーパーパワー補聴器を常時装用されている方は、
「高機能の全部盛り」=聴こえやすい ではない。

“音を安定させる”ことが最優先。
だからこそ、 エンツォIA3(ベーシック) が合うケースが多いのです。

もしエンツォIA9を購入して、1~4に該当しクリアフォーカスや360オールアラウンド指向性などを使用しなかった場合、ベーシックグレードと性能差がなくなってしまい無駄な出費になってしまいます。

ということで、現在スーパーパワー補聴器をご利用で音量自動調整などをすべてとめてご利用されている方やそういった自動調整がお好きではない方は、エンツォIAをご検討するとき3のグレードをおすすめ致します。

エンツォIAを検討される方へ(まとめ)

ここまでお読みいただきありがとうございます。情報量が多かったので、最後に「エンツォIAが向いていそうな方」と「総合支援法対応補聴器を中心に考えるほうが自然なケース」を簡単に整理しておきます。

【エンツォIA(IA3/IA4)を選択肢に入れてもよさそうな方】

  • ・Auracast/LE Audioを「今後しっかり使っていきたい」と感じている
  • ・パソコンやスマホからのストリーミングをよく使う(仕事・学校・オンライン会議・趣味など)
  • ・毎日長時間、スーパーパワー補聴器をフル稼働させており、できるだけ故障リスクを減らしたい
  • ・専用マイクやロジャーだけではなく、市販の送信機やマイクも選べる余地を残しておきたい
  • ・自動調整や多機能よりも「安定した音」を重視したい長期装用者(この場合は IA3 グレードが候補になりやすい)

【総合支援法対応補聴器を中心に考えるほうが自然なケース】

  • ・まずは自己負担をできるだけ抑えたい
  • ・通院や日常生活が中心で、Auracast 設備を使う場面があまり思い浮かばない
  • ・現時点では、スマホやパソコンとのストリーミングをほとんど使っていない

どちらが「正解」というわけではなく、ご本人の生活スタイルとご予算に対して、どこまで Auracast/LE Audio や充電式のメリットを重ねたいか、というバランスの問題になります。

また、本文でも触れましたが、補装具支給制度の基準額・利用者負担の割合・両耳支給の可否などは、お住まいの自治体によって異なります。実際に申請される際は、お住まいの地域の役所(福祉課・障害福祉担当)で最新情報をご確認ください。

聴力やコミュニケーションの状況、これまでの補聴器歴、学校やお仕事の環境によって、「ちょうど良い落としどころ」は人それぞれです。

当店では、総合支援法対応補聴器とエンツォIAの両方で試聴・シミュレーションを行いながら、「差額を払う価値があるかどうか」を一緒に整理していくことを大切にしています。

「まずは制度内でできることを知りたい」「Auracast を実際に体験してから考えたい」など、どの段階のご相談でも大歓迎です。今回の記事が、スーパーパワー補聴器選びのヒントになれば幸いです。

今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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