こんにちは、立川補聴器センターです。
本日はフォナック補聴器から販売されているヴィータスプラスの耳あな式をご納品いたしました。その調整事例と特性についてご紹介致します。
フォナック ヴィータスプラスはどんな補聴器?
フォナック ヴィータスプラスは2018年6月に発売された補聴器で、先行されて販売されている「フォナック オーデオB」「フォナック ボレロB」「フォナック バートB」のベーシックモデルという位置づけでリリースされました。
スペック
補聴器名 | ヴィータスプラス | 防塵防水 | IP68取得(耳かけ式、CIC型のみ) |
メーカー | フォナック(ソノヴァジャパン) | 適用聴力 | 軽~重 |
チャンネル数 | 6チャンネル | 追加プログラム | 4 |
保証期間 | 2年 | 周波数圧縮機能 | サウンドリカバー1 |
※IP68防水防塵等級を取得していますが、完全防水ではありません
※ご聴力により耳あな式が適用できない場合がございます
上位モデル「ビロング」シリーズとの違い
ヴィータスプラスは、上位モデル「ビロングシリーズ(型番にBと付くモデル)」との差別化のため機能が劣る部分があります。
- チャンネル数が6チャンネル(ビロングシリーズは8チャンネル~20チャンネル
- 周波数圧縮「サウンドリカバー」がビロングシリーズは2を採用、ヴィータスは1を採用
- 耳かけ式に「SP」というグレードがない(高度難聴の方向け)
- 環境自動認識機能「オートセンスOS」を搭載していない
- RIC型耳かけ式が1種類しかない(ビロングは充電式を含め4種類ある)
- 耳あな式のカラー変更ができない
- 耳あな式を取り出すときの「テグス」がカスタムできない
- その他多数違いがあります
S様にヴィータスプラスをご納品いたしました
S様は4年ほど前に弊店でRIC型の耳かけ式補聴器をご購入いただいたお客様ですが、ヘッドセットを使用されるお仕事になり耳かけ式ではヘッドセットが使いにくいという主訴がありました。
- ヘッドセットを使用時耳かけ式は使いにくい
- ヘッドセットより補聴器を通して電話を聞き取りたい
- なるべく音が優しい感じのものが欲しい
- 耳あな式を試聴してみたい
S様ご聴力
- ご年齢 50代
- 突発難聴により聴力低下
- 補聴器歴 4年
- 両耳装用
- スターキー社RICタイプをご使用
ヴィータスプラスを選定
ご予算のご都合もありますのでベーシックモデルの「フォナック ヴィータスプラス」を選定、耳型採取(インプレッション採取)を行い耳あな式でのご試聴を開始することにいたしました。ただ、左のお耳の2KHz、3KHzに山がありここに強い利得が入ると「うるさい補聴器」になってしまいます。左は低音~1.5KHzまでをしっかり補い、2KHz・3KHzの利得を弱めにする必要があります。チャンネル数が少ないヴィータスプラスでここが調整できるかが、S様の補聴器調整の肝になると思いました。
耳あな式ヴィータスプラス試聴開始、でもその前に・・・
なるべく優しい音にしてほしいとのご要望をいただいておりましたので、大きな音に対し快適に聞ける範囲内で抑える必要がありました。そのため、不快閾値(UCL)を測定し、最大出力がUCLを越さないように調整していきます。
赤いmが右の不快閾値
青いmが左の不快閾値
この数値を越さないように補聴器の最大出力(MPO)を調整していきます。フォナックの調整用PCソフトで不快閾値を越さないように調整できますが、当店では補聴器から実際出力されている音を計測し、MPOがUCLをオーバーしないように微調整を行っています。
特性器で実際に補聴器から出ている音を計測しUCLを越していないか確認し、微調整していきます。
ちなみに当店のフィッティング用と特性器です。特性器はアメリカのFONIXという会社のFP35という装置を使っています。PCはちょっと古い富士通のビジネスモデルですが、SSDとメモリ16GB、デュアルディスプレイ化して快適に使っています。右のノートPCにフィッティングソフトを映し、左のモニターに補聴器の特性を表示しています。デュアルモニターによるフィッティングが快適すぎてもう1画面には戻れません(笑)
調整完了、補聴器を着けた状態で聞こえを測定します
特性器上での調整が完了したら、実際お客様にヴィータスプラスを着けていただき防音室内で補聴器を着けた状態での聞えを測定(装用音場閾値)を測定します。当店では装用音場閾値は片耳づつ測定を行っています。補聴器を着けないお耳は、マスキングといい雑音を負荷した状態で測定します。
装用音場閾値
- 赤三角:右耳 補聴器をつけた時
- 青三角:左耳 補聴器をつけた時
- 左側白△:右耳 補聴器なしの時
- 右側白△:左耳 補聴器なしの時
- 白い△に対し、どの程度補聴器をつけると聞えが上昇するかを測定しています。
白△と黒▲の差が補聴器の装用効果になります。例えば50dBで言葉の聞き取りを行うと補聴器なし両耳では20個の回答に対し正答は5個、つまり25%の回答率、補聴器を着けると同じ50dBで20個の測定に対し19個正答できるようになることを表しています。こちらの測定は補聴器をお客様にご提供する際の必須項目となっています。(テクノエイド協会、補聴器効果の確認法を参考にしています)
ヘッドセットを使って電話の聞き取りを確認
主訴にありました「ヘッドセットを使った電話の聞き取り」を確認するため、アマゾンでbluetooth対応のヘッドセットを用意しておきました。
- 補聴器をつけた状態でヘッドセットがつけられるようにする
- ヘッドセットからの音声が聞きにくいときに備え、Tコイルをオプションで内蔵する
Tコイルがあればヘッドセットのスピーカーから出る音声が直接補聴器に入ってきますので、より聞き取りに貢献できると思いヴィータスプラス作製時に追加で搭載致しました。補聴器のプログラムスイッチを押せばTコイルモードに切り替わる仕組みになっています。
補聴器を着け、その上からヘッドセットを着けて、わたしと電話で会話してみました。お仕事のことも考えて少し早口でお話ししましたが、しっかりと聞き取れておりました。補聴器装用時の語音明瞭度が非常に高くなっていますので電話からの聞き取りも良好なご様子です。また、補聴器を着けてお耳の周囲を塞ぎますのでハウリングの心配がありましたがさすがフォナックさん!ヘッドセットをつけてもハウリングは全く起きておりません。(安心)
Tコイルを使用せず補聴器のマイクから入ってくる音声で十分聞き取れるとのことでしたので今回Tコイルは使用しないことに致しました。ヘッドセット+お電話で聞き取りにご不満が出たらTコイルを設定しご使用いただくことにいたしました。
ご試聴開始!
不快閾値の設定、補聴器からの出力調整(特性)、装用効果の測定、電話とヘッドセットの聞き取り確認、以上を行いお仕事に挑んでいただきました。1週間後、ご様子を伺うためご来店、ご足労いただきお話しを伺いました。電話の聞き取りはばっちりとのこと(よかった!)ちょっとご自身のお声が響くとのお訴えがありましたので微調整を行いご納品となりました。
当店では、お客様のご要望やニーズをお伺いしなるべくそれに沿うよう努力しております。ただ、不快閾値、特性器による出力調整、効果測定と非常にお時間をいただいてしまっているのも事実でございます。丁寧かつ迅速に行っているつもりですが、どうしてもお時間をいただいてしまうことが多くなりますので何卒ご了承いただけますと幸いです。
今回は、フォナック ヴィータスプラス耳あな式の調整と効果測定をご紹介致しました。今後も調整事例をご紹介していきますので宜しくお願い致します。補聴器のご相談、ご試聴のご希望がございましたら下記よりお問合せくださいませ。