いつも当店のホームページをご覧いただきありがとうございます。今回は、補聴器購入後の修理代金について調べてみました。各メーカー補聴器の修理代金の仕組みが目まぐるしく変化しており、修理に出すと補聴器を丸ごと交換するケースも出てきました。補聴器は高価なので、できれば修理して長くご愛用いただきたいと常日頃考えております。購入後の修理代金がどれくらいかかるか、各メーカー調べてみました。
この記事でわかること
まず初めに補聴器修理にまつわる用語を解説
補聴器を修理に出す際、専門用語を使う必要も出てきます。また業界用語もありますのでまずは、補聴器修理に関する用語を解説解説いたします。まずは各部の名称から。
RICタイプ(リックタイプ)
ご使用されている方が多い形の耳かけ型補聴器です。各部の名称をご説明いたします。
- フロントマイク
- リアマイク
- プログラムスイッチ
- ケース
- レシーバー
- ドーム
RICタイプ モールド付き
RICタイプの耳かけ型にオーダーメイドの耳栓を追加した形状です。
- フロントマイク
- プログラムスイッチ
- リアマイク
- ケース
- レシーバーワイヤー
- シェル(Cシェル、モールドと呼ぶメーカーもあります)
- レシーバー(シェルの中に埋め込まれています)
- テグス
耳あな型
最もご利用者様が多い(と思われる)カナル型と呼ばれる耳あな型です。
- フロントマイク
- リアマイク
- プログラムスイッチ
- フェイスプレート
- テグス
- バッテリーロッカー
- シェル(青い部分全体をさします)
- レシーバー(青い部分の中にあります)
補聴器を修理に出すときの業界用語
補聴器を修理に出すときにちょっとした専門用語を聞くことがあると思います。当店ではなるべく専門用語を使わないでかみ砕いた言葉でお伝えしておりますが、納品書や修理明細には専門用語で記載してありますので、ここで詳しく解説致します。
再作とは、オーダーメイド耳栓、オーダーメイド補聴器の形状を作り直すことです。お耳が痛い、緩い、ハウリングするなどの症状があるときに再作を行います。再作は、ご購入後ある一定期間は無料、一定期間を過ぎると有料になります。リサウンド社は再作可能期間が2年と非常に長く設定されていますが、その他のメーカーは購入後、3~4カ月以内です。
オーダーメイド補聴器(耳あな型・RICタイプ)を購入するときは再作期間がどれくらい設けられているか、チェックしておきましょう。リサウンドとNJHは比較的長めに設定されていますよ。
保証が切れた後、補聴器を修理する際、見積もりを取らず一定金額で修理を行うことを意味しています。メーカーにより区分修理の呼び方が異なり、シグニアはスマートリペアと呼びます。昨今、この区分修理を導入するメーカーが多くなっています。
区分修理を採用しているメーカーは、お預かりした補聴器を部品1点1点を交換・修理するわけではなく、補聴器本体全交換を行うことが多くなっています。
区分修理と対義語で、修理の見積もりを算出してお客様に報告し確認後、修理をすすめます。区分修理と違い、修理費用や見積費用がかかる場合あり、修理金額が高くなることもあります。
積算修理は簡単に言うと「修理の見積をとり、修理するか否か判断する」方法です。区分修理と比較し、修理金額が高くなったり、見積をとるだけで費用が発生する場合があります。
通常の保証修理とは別に全損した場合、紛失した場合にある一定期間メーカーが新しい補聴器を用意してくれるサービスです。
上記写真のようになってしまっても内部パーツが再利用できる場合、「再作」で修理可能な場合が多々あります。くれぐれも補聴器をすてないようにお願い致します。
リサウンドはエントリーモデルからハイスペックモデルまで紛失・破損保証がついています。上位モデルのみ添付されている場合や全額保証ではないメーカー(定価の50%オフでご提供)というメーカーもあります。
修理の際、補聴器を丸ごと新品交換するメーカーにこの現象が起きます。耳あな型はシリアル変更が起きることはほぼありませんが、耳かけ型をご利用中の方は修理するとシリアルが変更になるメーカーがあります。シグニア、オーティコンがこの方式を採用しています。
補聴器の保証書に記載されているシリアル番号は購入時のものが記載されています。オーティコン・シグニアは本体交換するケースが高いのでシリアル変更される場合が多いです。修理の納品書を貰い自分の補聴器のシリアルを把握しておきましょう。(紛失して警察に届け出があった時、照合するため)
シリアル変更に近い意味をもっています。近年充電式の補聴器は、バッテリー・アンプ・マイクが一体していることが多く、その一式のことをアッシーと呼ぶ場合があります。(アッセンブリーの略です)
自動車整備の業界で良く使われる言葉です(筆者は自動車整備士持ってます)たまに補聴器修理の納品書にASSYと書かれていることがあります。
修理後に再度同じ不具合が発生した場合、一定期間無償で修理を行うことができます。各メーカー一定期間の修理保証を設けており、修理明細書に明記されているメーカーもあります。ただし、修理したときと同一箇所の修理に限ります。(今回マイクが壊れました、2か月後にレシーバーが怖りました。こういった場合は有償になります)
補聴器の心臓部でマイクが拾った音を聴力に合わせて増幅する部分です。通信用のユニットなどがこの1つの部品に集約されているケースが多く、ここが劣化・故障すると補聴器が全く機能しなくなります。このパーツの交換が最も費用がかかります。
補聴器メーカーは、販売をやめた補聴器を5年間、修理を行っております。販売終了から5年が過ぎると修理が出来なくなります。修理終了はいつか、メーカーは自社のホームページに記載することが多いです。(フォナック 修理終了などで検索すると出てきます)
メーカーに補聴器を送り、①内部部品が新品と比較し劣化していないか ②外装、内部部品の清掃 を行い補聴器の分解を伴う点検を行うことです。お店では医療機器修理業という届け出を出していないと分解が出来ないため、基本的にはメーカーに送って点検・整備を行ってもらいます。
オーバーホールが目的でメーカーへ補聴器を出した際、重大な故障が判明し上記でご説明した区分修理や積算修理になることも多々あります。
補聴器をご利用いただく上で超重要な項目です。保証期間中に必ず1度はオーバーホールを行い良いコンディションを保つよう心掛けてください。補聴器を購入した際、スマホのカレンダーにオーバーホールの時期を予定として入れておくことをおすすめします(そうすれば通知が来ますよね)
各メーカーの補聴器修理費用
前置きが長くなりましたが、ここからは各メーカーの修理費用をご紹介いたします。この修理費用は2024年12月調べた価格を掲載しており、修理費用が部材の高騰などの影響で変更になる場合があります。また、障がい者手帳による補装具支給を受けている方は、修理の金額が異なります。
修理価格についてのご注意点
当記事に掲載しているメーカーの修理価格はすべてメーカー公式のサイトや資料に基づき作成しております。つまりメーカーの定価です。ご対応されるお店様によっては、お修理の際「送料」や「手数料」などがかかる場合がございます。あらかじめご了承ください。
フォナック
フォナックの修理代金が2025年1月に改訂、超良心的価格だったフォナックさんでしたが、残念ながら購入後の年数によって価格が変動する体系に変更されました。
〇フォナック 区分修理プラン早見表
耳あな/耳かけ 共通 | 購入~ 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 以降 |
---|---|---|---|---|---|---|
3年 保証 | A | A | A | B | C | C |
2年 保証 | A | A | B | B | C | C |
Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 | |
---|---|---|---|
外装修理 | 保証修理 | 10,000円 | 15,000円 |
外装+内部修理 | 保証修理 | 25,000円 | 45,000円 |
〇積算プラン(現在調査中)
項目 | 修理費用 |
---|---|
技術料 | 5,000円 |
外装修理 | 15,000円 |
内部修理 | 45,000円 |
積算プランの場合、技術料5,000円は必ず加算されます。積算プランで外装修理を行う場合、技術料+外装修理で20,000円がかかります。
〇耳あな型シェル再作
項目 | プラン | |
---|---|---|
シェル再作 | 区分プラン | 20,000円 |
シェル再作 | 積算プラン | 20,000円+5,000円 |
Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 | |
---|---|---|---|
区分プラン | 20,000円 | 20,000円 +B期間の修理費 | 20,000円 +C期間の修理費 |
積算プラン | 25,000円 | 25,000円 +積算プランの修理費 | 25,000円 +積算プランの修理費 |
耳あな型補聴器の再作を行う場合、区分プランでは20,000円が必ず発生し、さらに故障部位に対して修理費用が発生します。例えばB期間に再作を行いマイクが故障していた場合、再作は下記の金額がかかります。
20,000円+B期間の区分プラン25,000円=45,000円
補聴器をご利用いただく上で超重要な項目です。保証期間中に必ず1度はオーバーホールを行い良いコンディションを保つよう心掛けてください。補聴器を購入した際、スマホのカレンダーにオーバーホールの時期を予定として入れておくことをおすすめします(そうすれば通知が来ますよね)
フォナックの修理価格表【公式】
フォナックの公式が作成した2025年1月からの修理料表です。
フォナックは一般の方がみれるサイトに上記の修理価格表を公開していません。販売店のみがみれるパスワードロック付のサイトに保管してあります。
オーティコン
過去は所有している補聴器のクラスによって修理金額が変わる謎設定がありましたが、それは廃止され
〇オーティコン 補聴器修理 早見表
耳あな/耳かけ 共通 | 購入~ 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 以降~修理終了 |
---|---|---|---|---|---|---|
3年 保証 | A | A | A | B | C | C |
2年 保証 | A | A | B | B | C | C |
修理価格表 | Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 |
---|---|---|---|
オーバーホール | 保証修理 | 8,800円 | 8,800円 |
外装+内部修理 | 保証修理 | 30,000円 | 60,000円 |
〇耳あな型シェル再作
購入から120日以内 | Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 | |
---|---|---|---|---|
耳あな型シェル再作 | 無償 ※過失の場合有償 | 22,000円 | 22,000円 +上記修理費 | 22,000円 +上記修理費 |
例:C期間にシェル再作と内部部品の修理に出した場合
シェル再作(22,000円)+C期間の修理(60,000円)=82,000円
オーティコンの修理価格表【公式】
オーティコン公式の修理料金表 2024年7月改訂版です。
オーティコンも公式ページに修理の価格表を掲載していません。オーティコン・フォナック以外のメーカーは修理価格をカタログやWEBサイトに掲載しています。何故ってちょっと思っちゃいます。(知られたくない?)
シグニア
最近どのメーカーも導入している区分修理をいち早く取り入れたメーカーさんです。導入当時はやや割高なイメージがありましたが、現在は他のメーカーより良心的な価格と期間設定です。
〇シグニア スマートリペア 早見表
耳あな/耳かけ 共通 | 購入~ 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 以降~修理終了 |
---|---|---|---|---|---|---|
3年 保証 | A | A | A | B | B | C |
2年 保証 | A | A | B | B | B | C |
修理価格表 | Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 |
---|---|---|---|
レシーバー、アンプ、マイク、充電池の交換 | 保証修理 | 24,000円 | 40,000円 |
上記以外すべて オーバーホール含む | 保証修理 | 6,000円 | 12,000円 |
内部部品の点検・クリーニング・小物の交換 | 保証修理 | 6,000円 | 6,000円 |
シグニアの修理価格表【公式】
上記2社と異なり修理金額をユーザー様も見れるWEBサイト上にしっかり掲載していて好感が持てます。
スターキー
2024年9月前までは、購入後の経過年数により20,000円→30,000円→40,000円と金額が変動する仕組みを採用していましたが、9月以降は一律の金額に変更されました。
〇スターキー 修理保証制度
耳あな/耳かけ 共通 | 購入~ 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 以降~修理終了 |
---|---|---|---|---|---|---|
3年 保証 | A | A | A | B | B | C |
2年 保証 | A | A | B | B | B | C |
修理価格表 | Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 |
---|---|---|---|
簡易修理 | 保証修理 | 10,000円 | 15,000円 |
内部パーツ交換 アンプ交換なし | 保証修理 | 29,000円 | 見積→ 積算修理 |
内部パーツ交換 アンプ交換あり | 保証修理 | 39,000円 | 見積→ 積算修理 |
シェル再作 シェルのみ交換 | ー | 29,000円 | 見積→ 積算修理 |
シェル再作 シェル+内部パーツ | ー | 45,000円 | 見積→ 積算修理 |
スターキーの修理価格表【公式】
スターキーはあんしんメンテナンスパックという延長保証制度を導入しているため、上記のA期間を1年延ばすことができます。耳あな型の再作保証や紛失保証も延長されますのでスターキー補聴器をご検討中の方はこのメンテナンスパックの存在も覚えておきましょう。
NJH
NJHは、ベルトーン・ユニトロンの輸入代理店でこの2社の補聴器を輸入し、耳あな型は国内で製造しています。ベルトーン・ユニトロンをご利用の方はこのNJHの修理価格に準じます。
〇NJH 一律修理 早見表
耳あな/耳かけ 共通 | 購入~ 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 以降~修理終了 |
---|---|---|---|---|---|---|
3年 保証 | A | A | A | B | B | C |
2年 保証 | A | A | B | B | B | C |
修理価格表 | Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 |
---|---|---|---|
一律修理A→アンプ/マイク/レシーバー/バッテリー ※1 | 保証修理 | 24,000円 | 見積→ 積算修理 |
一律修理B→ボリューム・スイッチ・シェルの修正など ※1 | 保証修理 | 12,000円 | 見積→ 積算修理 |
一律修理C→耳かけ型ケース交換/オーバーホールなど ※1 | 保証修理 | 8,000円 | 見積→ 積算修理 |
※1修理部位については、下記の修理依頼書に詳細な内容を記載しています。
NJHの修理価格表【公式】
NJHもスターキー同様延長保証プランを用意しています。修理1年延長、デフォルトではついていない延長保証が1年ついてきます。延長保証の価格がすごく高いわけではないので、ベルトーン・ユニトロンをご検討の方は考えておいたほうがいいでしょう。
リサウンド
補聴器の修理を積算修理のみで行う唯一のメーカーです。リサウンドの修理体系は他メーカーと違って耳あな型の再作が長期に渡って無償で行えます。耳あな型補聴器を選択するうえでかなり大きな材料になると思います。
〇リサウンド 新ほっとシステム早見表
耳あな/耳かけ 共通 | 購入~ 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 以降~修理終了 |
---|---|---|---|---|---|---|
3年 保証 | A | A | A | B | C | C |
2年 保証 | A | A | B | B | C | C |
修理価格表 | Aの期間 | Bの期間 | Cの期間 |
---|---|---|---|
積算修理のみ | 保証修理 | 技術料6000円+ 部品代上限40,000円 | 技術料6000円+ 部品代上限なし |
リサウンド 修理価格表【公式】
リサウンドの場合、積算修理(見積後、修理価格をご提示してから作業)なのでメーカーが故障個所を特定し見積もり作成→お客様にご連絡→修理指示となり、他メーカーよりお時間がかかる場合があります。
リサウンドの耳あな型補聴器の再作
リサウンドは他のメーカーの追従を許さない鉄板のシステム「オーダーメイド補聴器の再作無料」をうたっております。体重の増減など様々な理由によりお耳に形状が合わなくなった耳あな型補聴器を最新の耳型で作り変えてくれます。
再作可能な期間を表にまとめました。
補聴器のグレード | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 |
---|---|---|---|---|
9グレード | ずっと再作 | ずっと再作 | ずっと再作 | ずっと再作 |
7グレード | ずっと再作 | ずっと再作 | ずっと再作 | ずっと再作 |
5グレード | 2年無料 | 2年無料 | 31,000円~ | 31,000円~ |
4、3グレード | 2年無料 | 2年無料 | 31,000円~ | 31,000円~ |
2グレード | 1年無料 | 31,000円~ | 31,000円~ | 31,000円~ |
※31,000円は、技術料6,000円とシェル再作費用25,000円を合算した金額です。故障個所が他にもあった場合、修理金額が高くなる場合があります。
※ずっと再作は、修理対応期間終了までとなります。
まとめ
今回は、フォナック・オーティコン・シグニア・スターキー・NJH(ベルトーン・ユニトロン)・リサウンドという世界的に有名な補聴器メーカー5社の修理価格を忖度なしで比較してみました。
下記表はまとめです。各メーカーの修理で「内部電子部品またはバッテリー交換」が必要になった時の修理金額をまとめてあります。
メーカー | 保証満了→4年未満 | 5年未満 | 5年以上 |
---|---|---|---|
フォナック | 25,000円 | 45,000円 | 45,000円 |
オーティコン | 30,000円 | 60,000円 | 60,000円 |
シグニア | 24,000円 | 24,000円 | 40,000円 |
スターキー | 29,000円 39,000円(アンプ交換) | 29,000円 39,000円(アンプ交換) | 積算修理 |
ベルトーン ユニトロン | 24,000円 | 24,000円 | 積算修理 |
リサウンド | 上限35,000円の積算修理 | 積算修理 | 積算修理 |
※上記の金額は内部電子部品またはバッテリー交換になった時、片耳の金額
購入後丸5年間、フル修理を24,000円で行ってくれるメーカーさんもあれば4年以上経過するとかなり高額になるメーカーさんもあり、補聴器を選ぶ際重要なファクターになるかもしれません。実際、店頭でお客様のお声を聞いていると大半の方が購入後の修理金額を質問されています。
今回は修理金額のメーカー比較だけで終わります。補聴器の修理金額を考える後編では、修理金額を抑える方法や修理を予防する方法についてご紹介していきます。また、当店ではこの補聴器修理の上昇を抑える独自施策を検討中です。こちらも併せて後編でご紹介致します。次回記事をお楽しみに。
ここまでお読みいただきありがとうございました。