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セミナーでAuracastを試験運用!人工内耳友の会「ACITA」神奈川支部さんで音声をAuracastで共有!

いつも当店のブログをご覧いただきありがとうございます。今回は、10月13日(月)に開催されたACITA神奈川支部さんのセミナーに参加して音声をAuracast送信しましたので、その模様をお知らせしたいと思います。

こちらのセミナーは、ヨメテルという電話の音声を文字起こしするアプリの説明会で、その説明を行う音声をAuracastで送信しようという取り組みです。Auracastの送信機、受信機はほぼ弊社がご用意致しました。僕が半分趣味で購入したAuracast送受信機をすべて持ち込み、当日現場に行ってお手伝い致しました。

そもそもAuracastとは?

AuracastはBluetoothの新しい規格で、「1台の送信機から、何人でも同時に受信できる」ことが特徴です。

従来のBluetoothが“ペアリングして1対1”だったのに対して、Auracastは“放送のように1対多”の音声配信が可能。補聴器や人工内耳がこの規格に対応すれば、会場や駅、空港などのアナウンスも直接お耳に届く時代になります。

過去の記事はこちら

当日の構成

音声はマイクで拾い、ミキサーで整えたあとAuracastで送信。希望者が自分のスマホや補聴器アプリで受信する形にしました。

  • 会場:横浜市健康福祉総合センター8階
  • 対象:人工内耳/補聴器装用者、健聴者
  • 送信:Auracast送信機
  • 音源:マイクはロジャーオンを採用、ミキサーを使ってロジャー・PC・スマホの音声をAuracast送信
  • 受信:Auracast受信機と人工内耳を接続、対応補聴器/対応ヘッドフォンはダイレクト受信

フォナックのロジャーをAuracast化して複数人に送信するという新しい試みも同時に実施しました。

今回のセミナー開催にあたり、ACITA神奈川支部の方と1か月近くLINEで打ち合わせしてセミナーに挑みました。その際、Auracast機器については「ある縛り」を設けています。

Auracast対応機器の縛り
  • プロ向けの機器は使わない(大規模セミナー向けの機器、非常に高額)
  • 受信機はアマゾン、アリエクスプレスで購入できるものにする
  • ミキサーなどもすべてアマゾン調達
  • 技適取得済みの機器(当たり前!)

つまり他の方が同じことをやりたい場合、専用の高額な機器を購入しなくても、アマゾン、アリエクでポチポチすればできちゃうというわけです。Auracastを広めるためには、実際に使うユーザーのパイを広げていこう!という思いを込めています。

人工内耳のAuracast対応状況

人工内耳についてあまり詳しくありません。ただ、この2か月ほど人工内耳装用者の方といろいろお話して色々勉強しました。人工内耳は2025年9月現在、Auracastに対応していません。今後、ファームウエアのアップデートで対応予定、つまりAuracast Readyの機器はいつくかあるようですが、実装された人工内耳はありません。

今回は人工内耳装用者の方と一緒に検証し、下記の方法で人工内耳/Auracast非対応補聴器へ音声送信することにしました。これはコクレア社・リサウンド社・ベルトーン社の人工内耳/非対応補聴器の事例です。

コクレア ミニマイクロフォン2とAuracast受信機の接続例

左のeppfunと書かれた受信機は後半で解説します。受信機から3.5㎜イヤホンケーブルでコクレアのミニマイクロフォン2(以下MM2と記載)で接続、人工内耳とMM2はワイヤレス接続します。中継器と人工内耳/補聴器間は、低ビットレートで送信するためAuracastのLE Audio音質で聞くことができないのがデメリットとなります。

Mリンクを使う方法

eppfun Auracast受信機でうけたキャストをTコイルで入力する方法です。この方法だとMM2のような中継器を挟まないので遅延が起きにくいことが特徴です。ただし、人工内耳/補聴器にTコイル(ループと呼ぶ場合も)の設定、プログラムを入れておく必要があります。

補聴器のAuracast対応状況

補聴器は一部のモデルのみAuracastを補聴器本体でダイレクト受信ができます。可能なのはリサウンドのビビア・ネクシア・サビー、スターキーのエッジAIです。それ以外は現在Auracast非対応の補聴器です。(2025年10月現在)

Auracast受信を実装している補聴器
スターキーはOS内蔵のアシスタントを使用

コスパ最強のAuracast受信機「eppfun BTR5」

今回ACITA神奈川支部さんのセミナーお手伝いにあたり、Auracastを送信することはできますが、受信機が全く足りませんでした。

参加者
  • 人工内耳 13名
  • 補聴器 3名(リサウンド2名/その他1名)
  • 健聴者 3名

私は、リサウンド補聴器を装用して当日参加(運営)致しました

補聴器はAuracast機能をすでに搭載しておりましたが、人工内耳とヘッドフォンはAuracast受信機能がないため、どうやって受信するかが一番の悩みどころでした。専用受信機を15名分用意するととんでもない金額になってしまいます。どうしよう。。。9月上旬、ふらっとアリエクスプレスを見ていたらこれを発見。

こちらはAuracastの放送を掴んで3.5㎜イヤホン出力に変換してくれる受信機です。操作も簡単で中央のボタンを3回押すだけで音声受信が開始されます。つまりAuracastアシスタント不要の受信機です。

お値段ですが、同じような機能を持ったMoerLab社の受信機がアマゾンで約13,000円、BTR5はなんと4,500円!即購入して、Auracastの検証を開始しました。

eppfun BTR5

3.5㎜イヤホンジャックの入出力があります
充電はタイプC
左が音量ボタン、右のスイッチは送受信を切替えします
技適マークがありますので日本で使用もOK

事前にお店でeppfun「BTR5」の検証を行いました。

思い通りの結果が出たのでセミナーに実践投入することになりました。ちなみに、Auracastのサンプリングビットレート「スタンダード」「ハイクオリティ」のどちらも、BTR5で受信できることを事前検証で確認しました。4,500円で優れモノ!

Auracastの送信について

今回主催のACITA神奈川支部さんからの要望は3つ。どうやってAuracastで送信するか結構悩みました。

要望

  • ヨメテルの説明を行う方の声をAuracastで送信
  • 途中で動画を流すのでPC音声も送信
  • スマホでデモンストレーションを行うのでスマホ音声も送信したい

つまり3つの音声を1つのAuracastで複数人に送る必要がありました。これってミキサー必要じゃない?マイクで音声を拾って確実にAuracast送信するには、しっかりしたマイクが必要。今回は、ロジャーで拾った音声をAuracast化して送信することにしました。

接続イメージ

主催の方と相談しマイク・PCの音声・スマホの音声を一旦ミキサーに通し、それをAuracast送信機に入力し、全員に共有することにしました。先ほど紹介したeppfunのBTR5は全部で13台用意、足りない方は他の受信機を使います。

ご了承ください!!

当日あまりにバタバタすぎて機材を設置した写真を撮り忘れていました。接続の事例は事前に店舗で検証した画像で紹介いたします。当日もこれと同じ機材で接続しました。

ロジャーオン3から声を送り、ロジャーネックループで受信、ネックループからオーディオ出力してミキサーへ入力しています。PC、スマホの音声もオーディオ出力をミキサーに入れて、1本のブロードキャストで送信しました。

使用した機材

今回使用した機器の

マイクは高価なロジャーを使用しましたが、アマゾンなどで売っている動作撮影用のノイキャンマイクでも十分代用可能です。たまたまワイヤレスマイクの手持ちがなかったため、ロジャーを使用しました。

健聴者の方(手話通訳、要約筆記の方)

手話通訳、要約筆記の方もいらっしゃいましたので、ワイヤレスマイクとAuracastだけでは、健聴者の方に音声が行き届きません。ここもAuracastを使いました。

ヤマハのモニタースピーカー「MS101-3」にAuracast受信機BTR5から音声を送り、健聴者の方向けの音声を配信しました。全く問題なくスピーカーからブロードキャストされた音声がでました。

当日持ち込んだ機材

セミナー当日、電車移動だったため荷物を全部手持ちできないため、近くのヤマト運輸営業所留めでお店から発送しました。発送前の機材一式がこちら。ヤマハのモニタースピーカーは2本持ち込みました。備えあれば患いなし!

リサウンドのテレビユナイト2が手前にあります。これは人工内耳でコクレア装用者様が接続できなかった時のことを考えバックアップで持っていきました。(リサウンドとコクレアのテレビユナイト2は共通とのうわさあり)

折り畳みコンテナ1箱にぎっしり詰め込みました。

当日の様子

セミナー当日は、人工内耳装用の方13名、補聴器装用の方3名(うち2名は僕と当店のスタッフです)、健聴者の方3名がAuracastで送信された音声を共有致しました。健聴者の方は、有線ヘッドフォンにBTR5を接続して受信しています。

2回目ですが、当日てんぱりすぎて写真撮る余裕ありませんでした

前列に座っている女性2名は、ヘッドフォンによるAuracast受信を体験されていました。後ろの席にもう1名、Auracast対応ヘッドフォンで聞いている方がいます。

黒い服の方は、コクレアミニマイクロフォン2にBTR5を使い受信。登壇者の方は、ロジャーを使い、ロジャーの音声をAuracast化して皆様に配信しています。

Google Pixel10で文字起こしされている方もいらっしゃいました。
このPixel 10は、会場スピーカーからの音ではなく、Auracastで受信した音声をそのまま文字起こししています。
マイクからの距離や会場の残響の影響を受けにくく、離れたスピーカー音を聞かせるよりも格段に認識精度が良くなっていました。

後半、自分はロジャーをもって駆け回っていました。質疑応答コーナーです。

必見!かなりマニアックなAuracast受信

主催の方ももちろんAuracast受信されていましたが、かなりマニアックな受信方法を使っています。主催の方は、コクレア社のKanso2を装用、Kanso2はLE Audio/Auracast共に実装しておらず、MFI/ASHAを搭載しています。

ASHAについては過去記事をご参照ください

なんとAuracastを非対応人工内耳(補聴器)で聞くことができるスゴ技を使っていました。例によって写真撮影できなかったため、自分のお店で再現した画像を掲載します。

USBドングル「FMA120」と専用アプリFloocastを使い、ユニトロン耳あな型補聴器でAuracastを視聴しています

この方が行っているAuracast受信方法を簡単に解説します。

2025年11月現在、リサウンド・スターキー以外の補聴器はAuracastを直接受信することはできません。人工内耳も自分が調べた限り直接受信は出来ないと思います。

この方法は、FMA120という白いUSBドングルをスマホに取り付け、Floocastというアプリをスマホにインストールすることにより、最新の規格Auracastを従来方式のBluetoothに変換してしまうという技です。このドングルを使うと、Auracastに対応していなくてもBluetoothさえ搭載してれば、人工内耳も補聴器もヘッドフォンもAuracastを聞くことができます。

このドングルとAndroidスマホを使うことにより、オーティコンでもフォナックでもAuracast非対応でBluetoothを搭載した補聴器はAuracastで音声共有をすることが出来ます。

つまり今装用している補聴器・人工内耳がAuracast非対応でもこのドングル1個あればAuracast対応になってしまう夢のようなUSBドングルなんです。使い方は英語サイトのみでPCを使って設定しますので多少の手間はかかります。

遅延が起きます

Bluetoothの一つであるAuracastをUSB経由で受信、それを違う規格のBluetoothで補聴器に送信しますので多少の遅延が発生します。遅延とは目で見ている動きと音声がずれて聞こえることです。

ASHA補聴器/人工内耳は、ジッターバッファという音声データのズレ(ジッター)を吸収し、音を滑らかに再生するための仕組みが動きます。バッファを多く取ると再生までに時間がかかり、遅延が発生します。

さすがとしか言いようがない!

画像引用 Xより @Amanojaku0124

これは作った人もすごいですが、見つけて実践導入しているのは凄いと思いました。このFMA120を使ってAuracastを受信するにはファームウエアの書き換えが必要です。手順は難しくありませんが、それを見つけてくることがすごすぎ!感激しました。フォナックのユーザーさん、これでAuracastを聞くことができますよ!

Auracast受信状況まとめ

セミナー後、主催者さんがアンケートを実施、その結果を共有いただきましたのでまとめました。

アンケート結果(Auracastの回答のみ)

アンケートの内容

1.本日の説明会で実際に使った情報保障をすべて選んでください(複数可)

 □ 手話通訳 □ PC要約筆記 □ 磁気ループ □ Auracast □ 利用しなかった

2.利用した手段の聞きやすさ・わかりやすさ

 Auracast
 □ とてもわかりやすい □ わかりやすい □ ふつう □ わかりにくい □ 利用していない

3.Auracast を利用した方へ 使用感や接続や操作はどうだったか?

 ■ 簡単 □ 普通 □ 難しかった

4.情報保障についてのご意見・ご感想

 自由コメント

※Auracastの部分だけ抜粋しました

  • 回答数 13
  • 当日に実際に使った情報保障(複数回答)
    • PC要約筆記:およそ 8/13
    • Auracast:およそ 9/13
    • 磁気ループ:およそ 3/13
    • 手話通訳1/13
  • わかりやすさ(Auracast 利用者)
    • とてもわかりやすい:3
    • わかりやすい:2
    • ふつう:2
    • わかりにくい:2

評価はややポジティブでしたが、会場条件・機器経路で体感差が出てしまいました。

使用機器別 Auracast 聞こえの状況

Auracastを利用された方が、どういった状況だったかをまとめました。

装用デバイス
人工内耳:13名MM2など中継器を使用:10名10名中8名が音量不足、ノイズあり
FMA120(スマホ→ASHA):3名全員エコーがあったが聞こえはクリア
補聴器:3名リサウンドAuracast対応補聴器:2名問題なし
フォナック+TVコネクター:1名結果不明
ヘッドフォン:3名Auracast対応ヘッドフォン:1名聞こえはクリア。音量問題なし。
BTR5+有線ヘッドフォン:2名聞こえはクリア。音量問題なし。

アンケートの結果と数値がずれていますが、アンケートを行った後運営さんがさらに追跡調査を行った結果がこちらです。コクレア人工内耳ユーザーさんが使用したミニマイクロフォン2に問題が集中する結果となりました。

〇この使用方法について再度解説

写真左側の黒い機器がAuracast受信機です。3.5㎜オーディオ出力をコクレアMM2に入力、MM2から人工内耳プロセッサに音声を送信しています。

(ノイズの原因は現在調査中)

FMA120 USBドングルを使い、Androidスマートフォン経由で聞いていた方からは、「エコーはするが音自体はクリアに聞こえた」との回答をいただきました。

エコーの原因を推測(装用者様と相談した結果)

  • スマホからのストリーミング中、人工内耳のマイクも動作している
  • スピーカーから出ている音声とAuracast→FMA120→スマホ→人工内耳経由の音声にレイテンシーが発生し、それがエコーの原因か?
  • 結論 人工内耳のマイクとストリーミングの音声のずれ

同じAuracastでも、「どの経路で耳まで届けるか」によって聞こえ方が大きく変わることが、今回いちばんの学びでした。

事前準備

弊社店内でもeppfun「BTR5」Auracast受信機7台+対応補聴器3台、1送信10受信のテストを行い当日に挑みました。また当日は開場4時間前に主催の方と到着し、3時間の連続試験を実施、BTR5・補聴器・FMA120など用意した受信機が問題なく受信できていることを確認致しました。

まとめ

Auracastを使った今回のセミナーは、個人向け機器でどこまで情報保障ができるかという挑戦でもありました。
結果としては「約半分成功・約半分課題」という印象で、特にセミナーの主役である人工内耳をご使用の方に、十分なAuracast体験をご提供できなかったことが非常に悔やまれます。
参加いただいた皆様、本当に申し訳ございませんでした。この場をお借りして深くお詫び申し上げます。

一方で、今回の取り組みを通して強く感じたことがあります。
それは、Auracastという“音による情報保障”の新しい手段を、聞こえにお困りの方が少しずつ手にしはじめているということです。
まだ受信側の機器構成や接続方法、さまざまな課題はあります。しかし、従来の手話通訳・PC要約筆記・磁気ループに加えて、Auracastが新しい選択肢として並ぶ未来が確実に見えてきたと実感しました。

今回の説明会では、Auracast受信を使って文字起こしを行った方もおられました。
Pixel 10で表示されていた文字起こしは、会場スピーカーの音ではなく Auracastで受信した音声を直接認識していたため、離れたスピーカー音を拾うよりも格段に精度が高かったのが印象的でした。
「音声→ストリーミング→文字起こし」の流れがクリアで、まさに音による情報保障の可能性を感じる瞬間でした。

ラストワンマイル

Auracastはすでに使える状態にあり、アマゾンで容易に入手可能で送信自体は問題なくできます。しかし、受信側の準備が整っておらず、ここがまだ手探り状態にあります。

Auracastの受信機も今回使用したBTR5含め安価で容易に入手できますが、そこから補聴器・人工内耳へどうやって音声を送るか、このラストワンマイルが現在の課題です。

非対応機器の接続サポート

Auracast対応補聴器(リサウンド)は十分に使用できることはわかりました。ですが、聞こえにお困りの方が全員リサウンドを使用してるわけではありません。他メーカーの方も大勢いらっしゃいますし、人工内耳の方もおられます。

Auracast非対応機器の方がどうやって容易に受信ができるようになるか、今後も検証を続けていきたいと思います。

今できる解決策

  • 既存の中継器(MM2など)がしっかり稼働できるマニュアルの作成(中継器と補聴器/人工内耳のペアリングが出来ていないことを防ぐ)
  • 非対応補聴器/人工内耳をご利用でAuracastを使用したい方向けセミナーの開催(使用方法メインの説明会)
  • FMA120のようなBluetoothをリレーする機器を探す
  • Auracast→補聴器/人工内耳 受信お手伝いの人員を配置

「どうすればもっと使いやすくできるか?」
「どうすればより多くの方が恩恵を受けられるか?」

日々考えながら、今後も検証と改善を続けていきます。もし良いアイデアやご意見があれば、ぜひお気軽に当店までお寄せください。今回も最後までお読みいただき本当にありがとうございました。

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