こんにちは、立川補聴器センターです。
本日は3D耳型スキャナー「オトスキャン」を使って作製したイヤモールドのレビューを紹介致します。オトスキャンは外耳道内にカメラを差し込み、それを使ってお耳の形を採取する最新機器です。当店は、2019年12月よりオトスキャンを導入しています。
イヤモールドとは?
イヤモールドは、耳かけ型補聴器に使用する耳栓のことです。耳かけ型補聴器には、イヤチップと呼ばれる汎用性の高い耳栓が付属していますが、お一人お一人お耳の形が異なるため抜け、脱落、音漏れが発生しやすくなります。音漏れが発生すると「ピーピー」というハウリングが発生する原因になります。
イヤモールドによりお耳のへこみ(耳介)でしっかり支えられるようになり抜け、脱落を防ぐことができます。また、音漏れを防ぎ不快な「ピーピー音」を大きく抑制できます。(こちらの画像は大きめのイヤモールドを装用しています。サイズはご聴力を拝見しながら変更できます。
3Dイヤモールドと普通のイヤモールドの違いは?
イヤモールドはお耳の中に印象材という「歯型」を採る粘土のようなものを入れて採取します。この方法が今までは一般的でした。ただ、2019年発売された3D耳型スキャナ「オトスキャン」の登場でお耳の中に印象材を入れなくても耳型が採取できるようになりました。
印象材をお耳の中に注入する方法で耳型採取を行う場合
- 注入するときの圧力で形状が変わってしまう
- 採取中に首を振ったり口を動かすと形状がずれてしまう
- 印象材の固さ(ショア)、注入方法により形状がずれる
他にも耳型採取についてまとめた記事があります。下記をご参照ください。
参考
耳型採取用3Dスキャナ「オトスキャン」によるリスク回避立川補聴器センター
オトスキャンを使って耳型採取する場合
他の記事で紹介しておりますので詳しいご説明は割愛いたします。
フル3Dのイヤモールドを作ってみた!
耳型採取・・・3Dスキャナ
イヤモールド作製・・・3Dプリンタ
フル3Dで作ったイヤモールドをGNリサンドさんのご協力のもと作製してみました。
採取した耳型がPC上に画像として表示されます。
こちらを「otocloud」という専用システムでメーカーさんにデータで送付します。今回はテストのため、わたしの耳を3Dスキャン、オフセット値ゼロで作製依頼いたしました。(オフセット値とは、3Dスキャンした耳型に対しどれくらい膨らませるか、または削り落とすかの値です)つまり、今回出来上がったイヤモールドはオフセット値ゼロのため私の外耳道内径をリアルに再現しています。
1週間ほどでイヤモールドが出来上がり店舗に到着しましたので早速装用してみます。
むむむ、結構緩い。緩いというより、外耳道が押されている感触がなく「イヤモールドを着けている感触」がない。着け心地は良好、耳の中や耳介部分に痛みやハリなし。ただ、この感触だと脱落はしないけど、バンバン「ハウリング」がでるんじゃないの??早速、ハウリングするか検証いたしました。
ハウリングが出やすいかどうか調整ソフトで確認
補聴器を調整するソフト(フィッティングソフト)には、ハウリングがしやすいかどうかを確認する機能が各社備わっています。お客様の補聴器を調整する際、その機能を使い現在の耳栓が合っているか、ハウリングが発生しないかを測定し調整を行っています。
つまり、現在わたしはフル3Dイヤモールドを緩いと感じていますが、ハウリングの測定を行いハウリングしにくい状態ならこの3Dイヤモールドは「良い出来」と判断することができます。早速検証していきましょう。
- イヤモールドと耳かけ型補聴器をわたしの耳につけてハウリングの測定
- 補聴器はフォナック ナイーダVとワイデックス ドリームFA-Pを使用
- 平均聴力70dBHLの聴力で初期調整の状態で測定を行う
- ベントは1㎜ 閉塞せずあけたままで測定
- Aの線・・・どの程度お耳から音が漏れているか
- Bの線・・・補聴器が音を大きくしている量
- Cの線・・・音漏れが全くなかった場合の線
- AとBが近づく・・・ハウリングが起きやすくなる
- AとCの線が離れる・・・耳栓が緩く音漏れが起きている
- 理想のライン・・・AとBが近づかずAとCが重なっている
ワイデックス ドリーム440FA-P検証結果
御幣があったら申し訳ございません。非常に澄んだ良い音で好評のワイデックスの補聴器ですが、難点がハウリングしやすいこと。そこで今回、ワイデックスのパワータイプ耳かけ型補聴器「ドリーム440 FA-P」を平均聴力70dBHLの聴力で初期調整し3Dイヤモールドを装用してハウリングテストを行いました。(わたくし自身の耳に装用してテストを実施)
Aの線とBの線はしっかりと離れています。Aの線とCの線は1KHzより高い周波数は重なっています。AとCは、250Hz~800Hz付近で少し離れています。
フォナック ナイーダV70-SP検証結果
総合支援法対応補聴器で高い人気を誇るフォナック補聴器のナイーダVの上位モデルで検証いたしました。ナイーダは高度用としてはかなり利得を上げることができる補聴器ですが、イヤモールドの出来如何によってはその性能を発揮できない場合もあります。ワイデックス ドリーム同様平均聴力70dBHLの聴力で初期調整しハウリングテストを実施しました。
Aの線、Bの線、Cの線ともに適正なラインになっています。
- 首を上下左右に動かす・・・ハウリングなし
- 口を開けたり閉めたりする・・・ハウリングなし
- 固定電話を耳に当てて通話・・・ハウリングなし
- 手で完全に耳と補聴器を覆う・・・ドリームだけ若干ハウリングあり(気にならない程度)
3Dイヤモールドの結論
オトスキャンを使った3Dイヤモールドのご紹介とその効果の検証を行いました。
●着け心地が良い
ぎゅっと締め付けられるような感じはなく軽い装用感で圧迫感がありませんでした。20分ほどつけているとイヤモールドを着けているのを忘れてしまうような軽い感触です。
●優しい感触でハウリングが起きにくい
軽い着け心地ですが、検証結果よりハウリングはしっかり防止できています。ドリーム、ナイーダV70-SPより高出力な補聴器(GN:エンツォ、オーティコン:3000DMなど)をご使用の場合、同様の結果は難しい可能性がありますが、総合支援法の高度難聴耳かけ型くらいの補聴器ならこの着け心地をご提供できると思われます。
(すでに総合支援法対応補聴器に3Dイヤモールドをご利用の方が数名いらっしゃいます)
イヤモールドを使用することで「補聴器の脱落、紛失防止」「音漏れの防止」「お耳に必要な利得の確保」「ハウリングの防止」ができるため良いことづくめですが、圧迫感や痛みがあると補聴器をつけるのが嫌になってします。
着けているのを忘れてしまう
我々補聴器に携わるものがお客様から言われてとてもうれしい一言だと思います。イヤモールドの圧迫感やハウリングでお悩みの方はぜひこの3Dイヤモールドを使ってみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
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